きっかけは数人の友人が同時期に彼らから語られるキーワードであった。イサム・ノグチ、猪熊弦一郎、安藤忠雄、谷口吉生、ジョージ・ナカシマ。頭上で渦が巻いている感覚・・・引き寄せられている・・・こんな感覚に襲われるといてもたってもいられなくなってしまう性分。

翌朝電話をかける。
「香川・高松まで・・ 早朝便の予約をお願いします」
前日の台風が過ぎ去り機上の窓からは澄み切った青空がひろがり、眼下には頂上だけに雲を携えた富士山がみえる。高松空港からバスに乗り30分程で高松駅に着く。重い荷物を持っての移動は避けたいので駅のコインロッカーで必要な道具をナップザックに入れなおし、駅を横切り市電の高松築港駅へ向かう。駅には3両編成の電車が止まっている。
日差しが強いせいか、車内のブラインドが閉まっている。地元の人に迷惑にならぬよう誰も座っていないシートに座りブラインドを解き放つと、まぶしい日差しが照りつける。目の前に座っている老人と目が合い「ブラインド開けたのはまずかったかなぁ・・」と思っていたら笑みを返したくれた。
電車がゴトゴトと動き出す。単線の為、途中で何度も停車する。東京の殺気立った慌しい電車に比べなんとも平和な空気が流れ、のどかな風景が車窓から広がっている。約30分で目的駅に辿り着く。そこから歩いて5分程のところに行きたい場所がある。道がわからなくて駅横のタバコ屋さんのお婆ちゃんに尋ねたら、外まで出てきてくれて暑い日差しの中で身振り手振りの案内をしてくれた。場所を確認できた僕は歩き出す。少し離れて振り返るとお婆ちゃんは心配そうに僕を見ている。「大丈夫ですよ・・」と手を振り場所に向かって歩き出す。

大きな木々に囲まれた桜製作所の入り口に辿り着く。ここを訪ねてみたかった。高鳴る想いのまま公道を横切り開け放たれた入り口に向かう。
「こんにちは〜」・・・・・・・・
あっという間の時間経過であった。
内容をここで記することは差し控えさせていただくが、先輩方々のお話を伺うことができたのは嬉しい限りであると同時に、同じ家具を扱う人間としてまだまだ勉強不足を実感する。初老の方とお話するといつも思うことがある。安易に情報を入手できる昨今とは違う状況下の中で模索しつづける情熱はすごいものがあると。歩き回り、捜し求め、言葉を交わし、手紙を交わし、時間をかけて答えを導き出し、次への時代に向かう。混沌とした高度成長の時代、次から次へと新しい素材、道具、機械が開発され時代の先端を目指していた。戦後から10年、20年、30年、40年、50年と今の時代まで。移りゆくその時代時代の中で桜製作所が考える最高の家具を追い求めて。ジョージ・ナカシマとの出会いもその情熱があったからこそ。

桜製作所を後にしてタクシーに乗り込む。次の目的地は13:00にアポイントをとってある。ゆっくり昼ご飯を食べる余裕はない状況。「すみません・・・どこかで手短に食事出来るところ連れてってもらっていいですか・」とドライバーさんに聞いたところ、「あぁ、安くて上手いうどん屋があるよ。有名うどん屋は並ぶしね・・・よっしゃ連れてってあげるよ」と。香川県は昨今のうどんブームに乗って各方面からチャターバスで乗り着けて5、6軒とうどん屋巡りツアーも珍しくないそうだ。
「着いたよ、ここ ここが美味しいんだぁ さぁ行っておいで・・」
地元の人ばかりで混雑している。配膳トレイも持って列に並び、揚げ物などをお皿の上にのせてぶっかけうどんをオーダーする。東京のうどんに慣れてしまっている自分としては・・・いやはやすごいこしの麺だった。もちろんすごく美味しかった。料理批評家ではないので美味く言葉で説明できないが、東京のフニャフニャうどんはいったい何だったんだ・・・ということです。