和菓子屋とうたってはいますが、お酒もあったり、器が置いてあったりしますが、
どういう意味合いからなのでしょうか。
今言ったように、まずお菓子というものは一人歩きしていかせるしかないなと。今後シンプリシティの活動としてはプロダクトを同じコンセプトできちっとやっていきたいと考えていて、和菓子っていうのは僕の中で食のプロダクトみたいなところがあって、和菓子をやることはそういう部分を兼ねていたりもします。また、お菓子とお茶とお酒っていうものをきちっと関係付け、提案できるものがあるんじゃないかとずっと思ってたんです。一階と二階で二種類のことをやってるんだけど、一階には一人歩きするもの、食べるプロダクトがあって、二階は茶房っていうかたちでやっていて、あの茶房のスタイルっていうのもまたこれはずっとやりたかったことで、またそれを一緒にやることではじめて意味があると思っていたんで、お菓子屋ができたらそこに一緒にあの空間をつくりたいと。それは何かっていうと自分なりに考える、分かりやすく言えばカフェなんだけど、こんなにカフェブームではあるけど、何も日本のオリジナリティがあるものはないわけで、もともとパリからもってきたものだよね。発祥はベルギーらしいけど。あのカフェ文化の流れでしょ。それが日本に来てかたちを変えて、流行りのカフェがどんどんできてきて。お茶が飲めて、そのまま夜までお酒が飲めて御飯も食べれるっていうことっていうことは面白いことだと思う。そこが一つのコミュニケーションができる場所だったり情報発信の場所になったり。けれど、それが果たしてちゃんと日本のものを真面目に考えてやっているものがどれだけあるのかなと思ってたんで、自分が思う日本の茶屋のスタイルはこうだっていうものをちゃんと提示したかった。そこはやっぱりお菓子があり、甘味処ってあるでしょ。江戸時代、東海道とかの道中に茶店があったと思うんだけど、そういう茶店って本来お茶があってお酒があって、ちょっとした御団子が食べられたり、休息の場としてもそうだし、たぶんいろいろな人たちにとって、そこがコミュニケーションスペース的機能を果たしていただろうと。昔はそれしかないからそこでいろんなものが生まれてたと思うんだけど、そういう場所が今の日本にはないんじゃないか。 かたちを変えたカフェはあれど、そのようなお茶店っていうのはないと。それをシンプリシティとしては自分たちなりの一つの茶房っていうものをちゃんとつくりたいと思ったんです。それがお菓子と絡んで、お茶お酒っていうものをやった理由だけど、いわゆる茶道からくるスタイルも考慮しながら、椅子に座った立礼式という作法があるんだけど、そういうカウンターをモチーフに今回のお店をつくっていて、あそこでお茶会ができるようにもしてます。もてなしっていう考え方があるでしょ。茶道の。それをお酒にももってこようと。お酒と甘味とお茶の密接な関係性というものをおもしろおかしくつくったのがここというわけです。
例えば今回やろうとしていたテーマの一つとして「季節」があるんだけど、そのテーマをお茶でもお酒でも同様に汲んでいて、季節のお酒っていうのを毎月、例えば春のふきのとうのお酒を自家製酒でやってます。フレーバー酒で、香味酒って呼んでるんだけど、その香りっていうのがお菓子に合うだろうと。昼間ちょっとお菓子と一緒にお酒が飲める。そのお酒は何だろうと思った時に、桜の香りのするお酒だったり、春の息吹を感じさせる、ふきのとうの香りのするお酒だったり。スタイルもお茶から流れてきてるんで全部お茶のスタイルでカクテルもつくってます。お酒の飲める昼の茶房、逆にお茶の飲める夜のバーっていうようなお茶とお酒を同等の価値観できちっと表現したいなという想いがあって、それがここなんです。こういう日本のカフェがあってもいいんじゃないかと。絶対にカフェとは呼びたくないんだけど。お茶も日本茶で。中国茶があれだけ流行っていろいろあるけど、日本の煎茶の入れ方もうちなりのお茶の入れ方でやっているし、日本茶をとにかく追求しました。お茶伝わってきたのは中国からだと思うけど。でも日本のスタイルっていうものがあるから、それをもう一度きちっと表現しようかなと。そこにお酒とお菓子があればそれが日本のカフェのスタイルであると。その日本のカフェの一番いい呼び方としては「茶房」が適当かと。
「内装やプロダクトに関して少し教えて下さい。」

 まずコンセプトは「粋」。テーマとしてまず、五感、季節感、歴史観、もう一つ感性・創造という意味での価値感、の四つの感というものをつりました。最初に言った「五感」で感じとれるっていうのは日本的美意識だと思うんです。日本人って必然と五感で物事を感じていて、微妙な匂いとか季節の香りとか微妙な光りの明るさとか、その日本的美意識っていうのをきちんと表現したかった。和菓子の洋菓子と違うところは五感で感じられるところで。触って、見て、嗅いで、触れて、食べて、雰囲気を愉しんで、五感すべてで感じられる。またそれには季節感があり、春夏秋冬すべてその中で表現がある。春になったら桜餅とか。もともとが、節句等の、年の行事からお菓子を食べる習慣がきてるから、それは季節感以外の何ものでもなくて、そこにうちのオリジナリティーを入れ込み、そういう四つのキーワードですべてそこから落としていきました。
 サブテーマで木火土金水(もっかどごんすい)というものがあって、陰陽五行説と言って、万物には陰と陽があり、五行から成り立つっていう中国の昔からのもので、

お茶の歴史を見たときにもその五行の木火土金水というものがすごくあったので、何かにつけてそれを意識したすべてのものを使っています。例えばお釜の火があり、蹲いの水があり、カウンターに木があり、床にモルタルとか土があり、という風にデザインの中にそれを全て入れ込んだということなんです。それは一つのテーマとしてありましたね。
 家紋は2ヶ月くらい本当に寝れないくらい悩んでて、結果今の家紋はすごくいいかたちになったんだけど。今回"SIMPLICITY SUPER STUDIO"というのをつくったんです。今後シンプリシティがだしていくプロダクトには全てそのSIMPLICITY SUPER STUDIOという名前をつけていきたいなと思っているんですが、その頭文字のSを三つを重ねた形が家紋の中央にあって、それが試行錯誤した結果非常にうまく、すごくきちっと出来ました。またそのS三つのマークの周りに五行の5つの輪があって、五つの輪の中にSIMPLICITY SUPER STUDIOのマークがあるというのも意味的にもうまく表現できたと思っています。