「すごくコンセプチャルですね」
やっぱりモノづくりっていうのはコンセプチャルじゃないとだめだと思うんだよ。なぜかっていうと、あとあと自分で分からなくなるでしょ。やってるうちに方向性がないと、あれ、これでよかったのかなって感じることがあるじゃないですか。僕もいつもそうなるんですが、どんどん突っ走っていったときにあれなんでこうなったんだっけって常に考えるんだけど、最初に決めたコンセプトがあれば、この木火土金水があるから5つの輪なんだなというように立ち戻れるし、それがないと自分で自分を制御できないというか、 次々と目に入ってくるものに影響されてしまいがちにもなるし、最終的に出来てきて気に入るものっていのはやっぱりコンセプチャルじゃないと自分が気に入らないんですよ。だから、一番悩むところがコンセプトワークだと思うんだけど、でもそれがきちんと出来ていれば、あとでこうだからいいんだという判断ができるんです。そういう意味で常にコンセプトワークにはかなり時間をかけてきちんとつくっています。
それにしても今日はあったかいね。
「お菓子に具体的にこだわっっている部分があれば教えて下さい。」
流行りなんだけど、甘さをひかえるということと、それからポーションが小さいということ、パッケージが喜ばれるギフトになれるというかシンプルでかつ品がよく、主張してないけど相当考えられているというか粋なものでありたいということです。粋って出過ぎてないけど相当考えられているっていうかそういうかけひきがあるでしょ。そういったものは意識しました。
甘さをひかえたり、豆の風味とか小豆の色というのは僕の中であったイメージがあったんですが、やってみたらすごく難しくて、例えば甘さを控えると長持ちしない。やってみて初めて知ったんだけど。砂糖が多ければ多い程長もちするんですよ。だからお菓子屋として商売するときに日持ちのしないものっていうのはすごく致命傷になる。売れ残ったものは捨てなきゃいけないし。ロスがすごく多いんですよ。すごく悩んだんだけど、でもさっき言った日々の菓子というものがあったんで、やっぱりこだわって砂糖を控えて、あんこの色もきれいな藤色にしたいという気持ちが初めからあったからかなりお金がかかったとしても徹底的にベストを尽くそうと。結果けっこういいものができたなとは思ってるんです。
プロダクトにおいては、まったく別なので色々想いがあるんですが、
今回こういう展示する場所ができたんで、今までも店で使ったりはしてたんだけど日の目をみないようなところがあって、ここでそのプロダクトを売ってどうこうっていうのはあまり考えてなくて、どちらかっていうとここでうちのプロダクトの表現ができればと思っています。このプロダクトのコンセプトももちろん日本の伝統工芸の再構築というものがあるので、日本の民芸や昔からの匠のものがあって、それをうちがそれを今の時代にどう蘇らせるかという部分がすべてのコンセプトであると。もう一つ言うと、それが使える道具であるということ。使えない飾っておくだけの美術品だったらうちがやる必要はないし、生活道具としてものをつくっていきたい。今、白磁をやってるんだけど、例えば南部鉄とか鉄もあれば銅もあればガラスがあったり、今後、素材別に出していこうかなと思っていて、まず今回は白磁と、ちょっと土を使ったものがあって、今後、例えば南部鉄の一つのシリーズです、というものができたときに初めて発表して、という作業をやっていこうかなと。で、やっていく上で一回りするとすごくいろんなもののかたちが一つのコンセプトによってつくられているという風になるかなと思っているんですが。
「いわゆる日本的なものを切実に大事にしたいという気持ちは、日常的にはなかなか感じ得ないものであると思うのですが、そういった想いはどこからくるのでしょうか?」

答えは明確で、インターナショナルになるためにはナショナリズムを抑えるしかないと。ナショナリズムこそがインターナショナルだと。自分の国籍、自分の生まれ持ったDNAっていうものを本当に理解した上でそれを表現することが何よりもグローバルに展開できることであり、英語を話せるとかそういう問題じゃない。まずは日本について自分の国籍のものについて自分がどれだけ表現できているかっていうことで世界に初めて通用すると思うんです。それは僕も海外に行って初めて思ったことで。

昔は僕もニューヨーク大好き少年だったし。けっこういろんなところを旅したんですが、いろんなところを見るとやっぱり日本がすごいっていう、思っていたより大したことなかったっというか本当に日本の方が奥深いと思って。今でもすごくインターナショナルにというか海外にって未だに思っているんですよ。全然変わらず。海外に向けてグローバルに何かをやりたいという、世界に何かを発信したいという気持ちはすごくあって、だからこそ日本のものを追求していなければいけないということです。
「最後に一言お願い致します。」
和菓子屋がやってる茶房っていう空間には、昼間お酒が飲めて夜お茶が飲める空間があり、それは多分今までどこでもやっていないスタイルであるはずだし、 こんなにロケーションがいいし、時間の流れをとにかくゆっくりにしようと思ってつくったので、是非いらしてみてください。