6:00。カーテンを開け放つ。3月中旬北海道ニセコ。昨日の雨が嘘のように青空が広がり、空気は見事に澄み切っている。羊蹄山の稜線がくっきり見える。最高の天気。

8:30。ガイドショップ。簡単なブリーフィングを受け、今日の行動計画を確認し、車で雪山へ向かう。やばい、胸が高鳴っている・・・。数年前からの夢。体と心の様子を伺いながら、朝の簡単な散歩からスタートし、ジョギング、そして夏山登山と少しずつ体力と勇気を積み上げてきた。同時に錆付いていたスキー技術も磨いてきた。それから3年弱が過ぎ・・・今年のシーズンに入る前に「今年こそ・・」と夢から目標に変えた。バックカントリーへの挑戦。

9:30。雲ひとつない空。薄い林間を抜けると、真白な斜面が遠くに広がっていた。広すぎて距離感がつかめない。足許はもう春の雪。表面は軽く凍っているが、中はふわぁっとしている。滑りにくそうな雪質。スキーを履いたまま登攀できるように、シールと呼ばれる滑り止めをスキー裏に貼りつける。さらに踵が浮く器具も取り付けると、かなりスムースに登攀ができる。そしてこれが、かなり楽しい。サクサク・スルスルと雪質の応じた音を奏でながら登っていく。
 
 
ガイドさんは僕らに話しかけながらも、雪、空などの自然の状態を観察しつつ、どこかに潜む危険を回避しながら、僕らの体力やレベルに応じたルートを見つけてくれているのだろう。経験から培われたガイドさんの判断力と行動力があってこそ、僕らは雪山に安心して入れるのだと実感する。リュックには雪崩に巻き込まれたときに使用する、ビーコン(電波発信機)、シャベル、埋まった人を見つけるゾンデ棒が入っている。山に入るときは必ず携帯せねばならいない代物で、今回僕らはそれらをレンタルした。昨夜の講習会で使用方法は教わった。使うことがないように祈るばかりだ。
 
 
休憩を挟みながら、標高をかせぐ。左側には、遠くに連なる山峰が見え始めた。正面には、これから向かう黒ポチの頂が見える。右側には、今日これから滑る予定の斜面が見え始めた。空気が澄んでいるのが良くわかる。かなり鮮明に遠くの稜線が望める。最高に気持ち良い。心が開放され「わぁぁぁ〜」と雄叫びを2度あげる。後方に、トレースする2人の姿が見えた。後方に広がる雄大な景色の中、彼らの存在は点点。人間なんて到底自然に太刀打ちできる存在ではないと改めて思い知る。